起業・スタートアップのためのアドバイス8
起業時の場所の決め方
掲載:2020/9/16
最終更新日:2020/09/16
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への起業のアイデア・スタートアップのためのアドバイスの第8回。前回は、人脈形成の必要性についてお話ししました。今回は、起業・スタートアップする場所の決定方法について解説していきます。
起業・スタートアップする場所は自宅それともシェアード・オフィス?
第3回の「個人事業主と会社設立どちらがよいか」の記事で説明したので、聡明な起業家・アントレプレナーを目標とする閲覧者の方は、何がポイントなのかはお分かりだと思います。まずは、オフィス代としてどれほどの予算が用意できているかです。
個人事業主としてスタートアップする場合はもちろん、会社を最初から設立する場合でも、運営資金が不足している場合は当然自宅での起業となります。
自宅で起業・スタートアップすれば、オフィスの場合に必要な敷金や礼金、毎月の賃貸料がかかりません。さらに、自宅の書斎で仕事をして、居間を打合せに使うなど税務署が納得できる理由があれば、使用する面積に応じてオフィス代として計上することができます。
例えば80平方メートルの家にお住まいで書斎が20平方メートル、居間が40平方メートルとしましょう。書斎は100%を仕事のために、居間は50%を仕事のために使用すると仮定しましょう。すると、書斎の20平方メートルと居間の半分の20平方メートルの合計40平方メートルをオフィス代として申告できるわけです。全面積の半分ですから、家賃の半分の金額を、オフィス料金としてコストに上げられるわけです。
外部からの資金調達なしに、ぎりぎりの自己資金で起業・スタートアップする場合は自宅で、と覚えておいてください!
起業家・アントレプレナー必見!シェアード・オフィスとは?
シェアード・オフィスは、外資系ベンチャー企業の日本法人などでは、ITバブルの弾けた2000年あたりから利用され始めていました。例えば、Regus(リージャス)ブランドで知られるIWG PLCはロンドン株式市場に上場しており(PLCはPublic Limited Companyの頭字語でロンドン市場に上場しているイギリスの会社が使用を義務付けられている呼称)、日本進出も1998年と20年を超えています。
一般にも、ソフトバンクが出資している上場延期で話題になったWeWorkにより、広く知られるようになったのではないでしょうか?
WeWorkの丸ノ内オフィスに入居企業を訪ねたことがありますが、オープンスペースで様々な入居企業の方とそのクライアントが打合せはもちろん、ビールを飲んでくつろいでいるのを拝見して、今までのシェアード・オフィス企業とは雰囲気が異なるなと感じました。
それまでのシェアード・オフィスというと、SOHO向けの小さなオフィスに受付サービスや電話応対等の秘書代行サービス、共同で使用できる会議室がついているというイメージでした。しかし、WeWorkの場合は、入居企業のメンバー同士がくつろぎながら交流することでアイデアがブラッシュアップできたり、新たなネットワークが築かれるという、WeWorkという企業名どおりの、共同のワーキング・スペースを超えたコミュニティが形成されている点が特徴なのではと感じました。
話を戻しますと、シェアード・オフィスとは英語のシェアーするオフィスという意味のとおりで、1ヶ所を1社でなく数社でシェアして使用するオフィスを指します。
上述のリージャスのように、資金が不足しているベンチャー企業や外資系の日本法人が、業務に必要なスペース(ワーキング・スペースに加え共同で使用する会議室やトイレなど)、備品(机や椅子などのオフィス家具やコピー機や業務用プリンターなどのOA機器やインターネット環境)、秘書や受付などのアシスタント・サービスを借り受けるレンタル・オフィス型が主流でした。
起業・スタートアップを目指す方必見!レンタル・オフィスの自宅オフィスに比べたメリットとは?
レンタルオフィスでは、上記のようにまずは、備品を買わずに済むというメリットが挙げられます。クライアント向けのプレゼンテーションをカラーで大量に作成するとなると、業務用のコピー機やプリンターが必要になってきますが、費用が足りないためキンコーズにわざわざ出向くということになります。こうした手間が省けるというのは大きなメリットでしょう。
また、事業がある程度大きくなってくると、クライアント候補などからの問い合わせも増えてくるでしょう。お一人で起業されており外出時などには留守番電話に転送されるという会社に電話した経験もありますが、留守番電話に入れるのは面倒だしやめておこうとなることもありました。ご自分だけの会社でもレンタルオフィスに拠点を構えておけば、オフィスの専任の方が電話にもすぐに応対してくれます。
融資を頼みたい金融機関がオフィスを訪ねてくると、仮定してみましょう。みなさんが担当者でしたら、自宅を訪問して社長ご自身が迎えにでてくるのと、立派なビルに入ったレンタル・オフィスでビジネスマナーもしっかりとした受付の方に迎えられる場合を比較すると、印象はいかがでしょうか?
そして、通常のオフィスを借りる際に日本では海外と異なり敷金・礼金が大きな負担となりますが、レンタルオフィスでは必要ありません。
このように、従来のレンタルオフィス型であっても、資金にある程度の余裕ができた時点で、自宅からレンタル・オフィスに拠点を移すことをおすすめ致します。
ちなみにリージャスの場合は、個室タイプでも東京の八重洲や兜町でも、月額5万円台からというオフィスもありました。今後の記事で解説しますが、1年間の運転資金を考慮してもそれぐらいならなんとかなるという方は、是非検討されてみてはいかがでしょうか?
起業家・アントレプレナー必見!インキュベータが運用するシェアード・オフィスとは?
スペースや備品、秘書サービスなどを提供する営利型企業によるものとは一線を画する、企業を支援してくれるインキュベータが提供するシェアード・オフィスというものも、実は昔から存在します。
神奈川県溝の口にあるKSP(かながわサイエンスパーク)というベンチャー支援事業を展開する団体は、民活法(民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法)の第1号認定事業者であり、インキュベート事業を1987年に開始しています。1994年にはシェアード・オフィスを開設、1997年には投資事業組合を設立して、ベンチャー企業への投資も開始しました。
筆者は2000年代に投資された1社の顧問をしていた経験がありますが、単なるレンタル・オフィス提供者だと思っていたKSPに追加出資を打診しようと社長が話しだした際に、「何故?」と、とまどってしまいました。
近年は、インキュベータがこれと思った企業には、レンタル・オフィスだけでなく、資金や事業アドバイスも提供する事例が増えてきており、インキュベーション・オフィスという言葉も生まれています。
1年から2年間などの限定された期間に限る場合が多いようですが、破格の価格でオフィスを提供され、We Work同様に他の入居企業とコミュニティを形成し、インキュベーション・マネジャーからの助言を得ながら事業を拡大するチャンスが与えられるわけです。もちろん、資金調達のチャンスも目の前にあるわけです。
こうした機会に恵まれた際には迷うことなく、ホーム・オフィスを手放すことをおすすめ致します!
次回は、印鑑の選び方について解説していきます。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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