映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス
『モモ』 9点

2021/03/17

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への映画から学ぶ副業・起業アドバイスのコラム。今回は、市場原理主義と経済のグローバル化による世界規模での貧富の差の拡大に警鐘を鳴らしている『モモ』について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。

副業・起業を目標とする方への『モモ』の概要

『モモ』は、ミヒャエル・エンデの同名小説を映画化した87年公開の傑作ファンタジー映画です。少女モモとその仲間の、時間泥棒(米国による経済のグローバル化の風刺)との闘いを描いた、心暖まる作品です。米英を除き、世界中で大ヒットとなりました。

ミヒャエル・エンデは、この「モモ」や、『ネバーエンディング・ストーリー』として映画化された「はてしない物語」で知られるドイツの児童文学作家です。その内容は、現代社会への風刺であり、大人が読んでも楽しめる作品となっています。監督・脚本は、ヨハネス・シャーフというドイツ人が務めました。素晴らしい文学作品を映画化しても大抵は小説の魅力を100%再現することなど不可能なのですが、『モモ』はこの傑作小説を忠実に再現していて、原作どおりのストーリーが作品の大きな魅力となっています。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoesには残念ながら登録されていませんIMDbでもたった10人の評価しかありません。恐らく資本市場主義を批判しているとの理由からでしょうが、米国の映画界から無視された作品となっているようです。

主役の少女モモは、無名の新人であるラドスト・ボーケルが演じています。その純粋な大きな瞳と巻き毛の少女は原作のモモそのままであり、このボーケルの存在により映画の『モモ』が小説の「モモ」を超えたといえるかもしれないです。その後のボーケルはドイツ映画に数作出演することはありましたが、国際的に活躍することがなかったのは、非常に残念です。

また、モモを助ける時間を司るマイスター・ホラを、『マルタの鷹』『キー・ラーゴ』『アフリカの女王』などで知られる名監督ジョン・ヒューストンが演じています。

起業家・投資家を目指すみなさん向けの『モモ』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、イタリアのある村のローマ時代の遺跡の円形劇場で始まります。突然どこからか現れた少女モモ(ラドスト・ボーケル)は掃除夫ベッポに発見され、村に住むことになりました。その村では、レストランではコーヒー1杯で老人達が長い時間談笑し、ある男性は好きな女性のために決まった時間に花を届けるなど、貧しくても人間味のある暖かい生活を営んでいたのです。モモも、そうした村に自然と溶け込んでいきました。

しかし、村でのそうした生活も、時間泥棒である謎の灰色の男たちの出現で急変します。時間泥棒たちは、レストランのオーナーには、「コーヒー1杯で数時間も居座られて、如何に経済的損失をこうむっているか」を、花を届ける男には、「今まで数えると、いかに膨大な時間を花を捧げる時間に費やしているか」について、説きました。そして、大人たちの生活を、次第に機能的な拝金主義へと変えさせていったのです。

モモただ一人が時間泥棒に戦いを挑む決意をするのですが、村の人々は誰も協力してくれませんでした。しかし、唯一の味方のカシオペアという名のカメの導きで、モモは時間をつかさどるマイスター・ホラ(ジョン・ヒューストン)のもとにたどりつきます。ホラから人生と時間の大切さを学んだモモは、相手の話に耳を傾けその人自身を取り戻させてくれる不思議な力で、時間泥棒との戦いに挑んでいくのでした…。

『モモ』を観て副業・起業を目指す方に気づいて頂きたい点

作者であるエンデの言いたかったことが何であるのかについては、いろいろ議論があるようです。重要なのは、この『モモ』から何を感じとるかでしょう。作者は、日々の生活に追われ、忙しさの中で、生きることの楽しさを忘れてしまった現代人への、米国発の資本主義と経済のグローバル化への警鐘と理解できました。

この「モモ」が書かれたのは、1974年です。英国では78年に保守党のサッチャー政権が成立すると、「ゆりかごから墓場まで」と言われた高い福祉政策を廃絶し、規制緩和と石炭・電話などの国有企業の民営化を推し進めました。その結果、権益を守られてきた国有企業は競争にさらされました。外国資本が流入し国内企業が淘汰される「ウインブルドン現象」が起き、労働者の雇用は失われ、貧富の差が拡大しました。

米国では保守党のレーガン政権が81年に誕生、富裕層と企業への減税と規制緩和を推し進め、高金利によるドル高と輸出減少による失業率増大と工場移転、現在に至る貧富の格差の拡大を招きました。

その後、こうした米国による市場原理主義が世界中に広まり、いわゆる弱肉強食のグローバル経済が進展し、世界中の市場が米国資本主義の元に一つになってしまいました。日本でも終身雇用が崩壊、非正規労働者の増大を招き、貧富の差が拡大してきたのは、ご存知の通りです。

この「モモ」が書かれた74年、『モモ』が公開された87年には、まだ、イタリアやスペイン、ギリシャなどの地中海沿岸諸国には、「シエスタ」という昼寝の習慣がありました。ビジネスマンでも、昼食は家に帰り家族と一緒にとり、その後2,3時間のシエスタ(昼寝)をとるのです。そのため、店も1時から4時まで閉まってしまいます。非生産的ですが、何と人間的で、家族的な素晴らしい習慣だったのでしょう!

そうした中、80年代に入り、米国発のグローバリズムの波がイタリアにも押し寄せてきました。北部のミラノ人が南部のローマにやってきて、レストランの店主に囁きます。「イタリアの中だけで競争をしている時代は、終わってしまった。世界が、一つの市場になった。これからは、イタリア企業は世界に出て行けるが、反対に、世界中の企業がイタリアに規制緩和で進出してくる。「シエスタ」なんかしていて、ワーカホリックな日本人やアメリカ人、ドイツ人に勝てると思うのか?レストランも同じだ。店をもっと効率的に運営しないと、駄目だ。「シエスタ」はそのうちなくなるし、店を朝から夜まで休みなしにオープンしよう。効率的にするために、カフェテリアにするべきだ」と。まさに時間泥棒と同じではないでしょうか?

サッチャー政権やレーガン政権が誕生し、市場原理主義と規制緩和が開始され、それが世界中に輸出され、人々の暮らしが一変してしまいました。世界中で正社員が減り非正規労働者が増加し、いわゆる中流階級が減少し下流階級に転落してきています。人々は生きる喜びを失い、将来への希望もなく、生きていくことに必死になっています。他人のことを省みる余裕もありません。まさに、時間泥棒の思いのままの状況になってしまったのです。

将来の起業家・投資家候補であるみなさんには、こうした新自由主義と経済のグローバル化に警鐘を鳴らした素晴らしい預言書であるこの『モモ』を、是非とも映画で鑑賞する、または本で読んでいただきたいものです。

そして21世紀にはいり、勝ち組であった米国でも2007年に日本ではリーマン・ショックと呼ばれる金融危機が起こり、貧富の差が拡大して今に至っています因果応報は必ずあるのだと教示してくれています。

こうした風潮の中で、ミニマリズムなどの、必要最小限のモノだけあればいいという逆転の思想が生まれてきています。シリコンバレーを中心に、世の中の役に立とうとする起業家が増えてきています。アタッカーズ・ビジネススクールを卒業するみなさんは、時間泥棒などにはならず、かつての家族に囲まれた幸せな世界を取り戻そうとするモモのようになって頂きたいと、強く思っています。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。