映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス
『サンキュー・スモーキング』

2021/09/16

アタッカーズ・ビジネススクールの、スタートアップを目指すシニア・女性・ミレニアル世代などへの映画から学ぶ副業・起業アドバイスのコラム。今回は、起業家にとっての家族の大切さとマーケティングが持つ怖さとパワーを教示してくれる『サンキュー・スモーキング』について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。

副業・起業を目標とする方への『サンキュー・スモーキング』の概要

『サンキュー・スモーキング』は、クリストファー・バックリーの小説『ニコチン・ウォーズ』を原作とするジェイソン・ライトマン2005年監督作品です。タバコと肺がんとの因果関係がないことを世間に信じさせるために奮闘する、タバコ業界を代表するロビイストの生き様を描きました。

ベストセラーの小説『ニコチン・ウォーズ』を元とするストーリーが、アメリカ流のブラック・コメディ満載で笑わせてくれ、とにかく楽しめます。悪役であるはずのタバコ業界を代表する主人公のロビイストのキャラクターが、最大の魅力となっています。ローン返済のためだと割り切って仕事をしている主人公の巧みな話術に、つい引き込まれてしまうでしょう。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoesの258,586人の視聴者による評価は4.02という高評価で、やはりアメリカ人はコメディ好きなのだと痛感させられました。ゴールデングローブ賞の主演賞と助演賞にはドラマ部門と共に、ミュージカル・コメディ部門があるくらいですので。

主人公のニック役は、アーロン・エッカートです。下積みが続きましたが、2000年にジュリア・ロバーツがオスカーを獲得した大ヒット作『エリン・ブロコビッチ』 でのジュリアの恋人役で脚光を浴びます。以降、グウィネス・パルトロー共演の『抱擁』(02年)、主人公の科学者を演じたヒラリー・スワンク共演 のパニックSF『ザ・コア』(03年)、ベン・アフレック共演のSF作品『ペイチェック 消された記憶』(04年公開)、左遷されたFBI捜査官と無差別殺人犯を殺害する謎の男との攻防を描いたベン・キングズレー共演のサスペンス『サスペクト・ゼロ』(05年公開)などの佳作で、人気俳優としての地位を固めつつありました。この『サンキュー・スモーキング』での憎めないPRマン役でゴールデングローブ主演男優賞にノミネートされ、ミスター・ファイヤーことリー刑事を演じたジェイムズ・エルロイの同名小説を映画化したサスペンス大作『ブラック・ダリア』が大ヒットとなり、一気にスターダムに躍り出ることとなります。『ダークナイト』(08年)では、準主役のデント役を務めました。

ハリウッドの大物エージェントのジェフ役が、80年代の青春スターのロブ・ロウです。トム・クルーズらこの世代の若手スターの出世作となったコッポラ監督の『アウトサイダー』(84年)、アーヴィングのベストセラーを映画化したジョデ・フォスター、ナターシャ・キンスキー共演の『ホテル・ニューハンプシャー』(84年)、大ヒット青春映画『セント・エルモス・ファイアー』(85年)、デミ・ムーアとのラブ・ロマンスの名作『きのうの夜は… 』(86年)、などで一世を風靡しました。当時とあまり変わらぬイケメン振りを発揮していて、ハリウッドのエージェント役はぴったりです。

タバコ業界の大物ザ・キャプテンを、『ゴッドファーザー』の執事トム・ヘイゲン役などで有名なアメリカを代表するバイ・プレーヤーであるロバート・デュヴァルが演じています。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『サンキュー・スモーキング』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、アメリカの首都ワシントンD.C.で始まります。「情報操作の王」とさえ呼ばれるタバコ業界を代表するロビイストのニック・テイラー(アーロン・エッカート)は、喫煙者たちの権利を守るため、高まる禁煙運動からの攻撃を、魅力的な笑顔と巧みな論理のすり替えでかわしていました。タバコと肺がんとの因果関係がないことを世間に信じさせるために、日々奮闘していたのです。業界の大物キャプテン(ロバート・デュヴァル)からは、自家用機を使用させてもらえるほどに目をかけられていました。世間からは厳しい目を向けられていましたが、離婚した妻と住む一人息子のジョーイだけは、ニックを尊敬していました。本音を言える相手は、同じく悪評高いロビイストであるアルコール業界のポリーと銃器製造業界のボビーだけでしたが・・・。

嫌煙派のフィニスター上院議員がタバコのパッケージにスカル(ドクロ)マークを付けるように働きかけていることを知ると、ニックはジョーイをつれてハリウッドに飛び、ハリウッドの大物エージェントのジェフ・マゴール(ロブ・ロウ)に、ハリウッド映画に喫煙シーンを盛り込むように働きかけます。タバコ被害を訴える初代マルボロ・マンの俳優には、金を受け取らせる工作をするのでした。しかし、ワシントン・プローブ紙の美人新聞記者ヘザーにベッドで話したことが暴露記事となり、ニックは仕事を失ってしまうのでした・・・。

『サンキュー・スモーキング』を観て副業・起業を目指す方に気づいて頂きたい点

嫌われ者のタバコ業界、アルコール業界、銃器製造業界のロビイ担当が定期的に集まって憂さ晴らしをするという設定には、笑わされます。喫煙、飲酒、銃というアメリカ社会が抱える問題を、痛烈に皮肉っています。麻薬も当然加わるべきですが存在しないのは、当時は大麻も非合法だったので業界団体のPR担当がいないからでしょう。現在ならば、3人ではなく4人の会合になっているかもしれませんね。

タバコが健康によくないことは、子供でも知っていることです。しかし、業界とそこで働く従業員は、自分達が生きていくためにはそんなことには目をつぶるわけです。そして、巧みな話術と映画などのマス・メディアを使った見事なマーケティング戦略で、人々を丸め込みます。優秀なマーケティング/PRマンを雇って、世間を欺くわけです。それは、アルコール業界や銃器製造業界でも、同じことです。アメリカ社会が抱える闇と、マーケティングの持つ怖さとパワーを痛感させられます。ニックと癌を患う少年と健康推奨者とのパネル・ディスカッションにおいて、ニックと癌を患う少年が握手をする場面は、痛烈なジョークです。将来の起業家・アントレプレナーのみなさんには、儲けるためではなく、世の中の役に立つために起業するという精神を、失わないで頂きたいと思います。

愛し合っていたはずの女性に裏切られ、仕事も失ってしまった傷心のニックを支えるのは、息子のジョーイです。もう誰も信用できず、誰にも必要とされないようなどん底の状況でただ一人ニックを信じ、励ましてくれるジョーイの姿に、あるべき父と息子の姿を見て心を打たれます。起業・スタートアップを目指す皆さんは、起業は成功するとは限らないのだという事実を常に胸に抱いて頂きたいのです。失敗した際にはもちろん、うまく行かずに苦しい時には、家族や恋人が必要だということも。

世間の嫌われ者であり、離婚もしているが、息子を大切にし、尊敬もされています。主人公はなぜか、憎めないキャラなのです。そのキャラの最大限の魅力を引き出したアーロン・エッカートのチャーミングな笑顔と演技が、理想的なアメリカ人像として、強く印象に残ります。コメディとしても楽しめ、アメリカ人の魅力に触れ、親子の情愛に心を打たれ、マーケティング天国のアメリカ社会の問題点についても考えさせられます。どなたにでもおすすめできる、一級の娯楽作品といえるでしょう。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。