海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
ディープマインド(DeepMind)

掲載:2020/11/30

最終更新日:2020/11/30

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今までご紹介してきたAlphabet(アルファベット)の子会社の発展に寄与してきたAI企業DeepMind(ディープマインド)について解説していきます。

AI(人工知能)とその歴史とは?

まずは、AIについて、おさらいしておきましょう。閲覧者の方はAIについてはもちろん目にする機会が多かったでしょう。Artificial Intelligenceの頭字語でAI、人工知能と訳されます。

これまで人間にしかできなかった認識、推論、創造などの行為を膨大なデータを元にそのアルゴリズムを解析してコンピュータが代用することです。人類に匹敵した知能を持ったコンピュータといえば分かりやすいでしょうか?

SF作品には昔から登場しておりスタンリー・キューブリック監督の名作映画『2001年宇宙の旅』(1968年)に登場するHAL9000がAIの原型と言われていますので、興味のある方はご覧になると将来のAIの姿の把握の助けになると思います。人間の命令にNOといえるコンピュータです。

AIには2つの基盤があります。一つがディープラーニング(深層学習)、もう一つがビッグデータで、これについて理解していただければAIについてはある程度わかったということになるでしょう。

ディープラーニングは、人間の脳の持ついくつかの特性を数理化したマシンラーニング(機械学習)の方法で、2006年に提唱されました。膨大なデータ(ビッグデータ)から導き出されたパターンと推論を、コンピュータの圧倒的な計算能力を用いて統計処理して結論を出すわけです。

コンピュータの処理能力の驚異的な進歩と多層ネットワーク化でエラー率が劇的に改善しました。

ビッグデータは、処理できうるデータ量を超えた膨大なデータ、と言う意味です。グーグルがデータ処理を分割し複数のコンピュータで並列処理する技術を2004年に発表、膨大な数のサーバを有するグーグルがこの分野でも優位にたっています。

このビッグデータとディープラーニングの併用により2010年代からAIが脚光を浴びるようになり、2016年にDeepMind社が作成したコンピュータ囲碁プログラム「AlphaGo」が韓国のトッププロ棋士を破り、大きなニュースとなりました。

1997年にチェスの世界チャンピオンを破り話題となったIBMのDeep Blueのように、最初から設定されたプログラムではありません。マシンラーニング技術により、人間の対戦相手と同じ条件でプレイしていることが、Deep Blueとの大きな違いだということです。

そして2017年には、改良版の自己学習版である「AlphaGo Zero」が、「AlphaGo」を100勝0敗で破ったそうで、もう人間がAIに勝つことは不可能という次元に達したようですね。

AI企業として世界トップレベルのDeepMind(ディープマインド)とは?

DeepMind(ディープマインド)は2010年に創業されたイギリスの人工知能会社で、スペース・インベーダーなどの70年代や80年代に流行したビデオゲームをAIに学習させることから始まったそうです。

テスラやスペースXのファウンダーであるイーロン・マスクなどからの投資を受けた後に、7つの異なるアタリ社製のビデオゲームとAIが対戦できるという論文を元に、2014年にはグーグルに買収されました。本拠地はロンドンですが、カナダやアメリカ、フランスにも研究拠点があります。

DeepMind(ディープマインド)はマシンラーニングと人間の神経システムの機能(ニューラル・ネットワーク)研究から、人間の脳について理解することでコンピュータに知性を与えることを目的としています。

AIを社会や人々のために役立てようという2016年に設立された非営利組織Patnership on AI の設立メンバーにも、アマゾン、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、IBMというビッグネームと共に名を連ねています。

もう人間が太刀打ちできないゲームプレイヤー

上記のコンピュータ囲碁プログラム(AlphaGo)のようなコンピュータの知力が人間と同等であることを証明するプログラムでは、「AlphaZero」という囲碁だけでなくチェスや将棋にも適用できるプログラムもあり、「AlphaGo Zero」のように無敵のようです。

「AlphaGo」の他のAIとの違いは、過去の囲碁のトーナメントのデータを元に、その脳が様々な一手を打つことだそうです。勝利からも敗戦からも学び、人間を真似てどんどん進化していきます。

「AlphaGo」は2つのニューラル・ネットワークを元にしているそうです。1つは、次の一手の可能性を探り、一手を決める価値のネットワーク。もう1つは、学習により学ばれて、どんどん進化するポリシーのネットワークです。この2つにより、相手の最も可能性の高い一手を特定するのです。

さらに、自分自身と数百万回もゲームを行うことで進化させ、勝率を高めていくとのことです。人間はどんなゲーム好きでも数百万回ゲームをするのは不可能ですから、不死身の伝説のプレイヤーと勝負をすることになるのですから勝ち目はないですよね?

そして「AlphaStar」という名前でE-Sportで人気のゲーム分野にも導入され、「スタークラフト2」というゲームでも上位0.2%のグランドマスターレベルとなったとのことです。

もうこうしたゲームの分野では人間のDeepMind(ディープマインド)のAIプレイヤへの勝利はほとんど不可能になっているようです。

DeepMind(ディープマインド)はヘルスケア分野にも注力している!

「AlphaGo」のようなエンタメ系だけではなく、DeepMind(ディープマインド)はヘルスケア分野にも力をいれています。

2015年には無料で医療を提供するイギリスの国民保険サービスNHSとクリニカルテスト・マネージメント用のアプリの共同開発で合意しています。

2016年には「AIphaFold」という遺伝子配列から、タンパク質の3次元構造形成プロセスという未知の世界を解明し、新薬の開発につなげるというような、バイオ分野の研究を開始すると発表しました。

2018年には43のタンパク質のうち25の正確な構造を解明したことで、1994 年から隔年で開催されている世界規模のタンパク質の構造を予測するプロジェクトCASPを受賞しました。毎回世界中から100以上の研究機関が参加するこの分野で最も優秀な機関を決定するコンテストであり、画期的な偉業だとのことです。

現在世界中がパンデミックの中にある新型コロナウイルスについても、このAIphaFoldを使用してその正体を解明しようとしているそうです。

タンパク質の構造解析の他にも、唯一白目まで観察できる世界最大の眼底カメラ企業Optos社から提供される膨大な患者データからパターンを見出し、白目に発生する糖尿用網膜性を初期の段階で発見するプロジェクトは以前にご紹介しました。

ロンドン大学病院とは2016年に頭頸部における健常体細胞と癌細胞を区別するアルゴリズムを共同開発すると発表しています。

NHSとの電子カルテとリンクしたモバイルアプリの開発もあります。患者のデータにこのアプリで簡単にアクセスできることは、膨大な時間の節約と患者の様態を知るための画期的な差別化につながったと医療関係者から絶賛されているそうです。

日本でもぜひとも実現してもらいたいものですよね。

2017年には、英国がん研究センターと乳がん検査のマンモグラフィーにマシンラーニングを応用し、乳がんの発見率を上げると発表しました。

マンモグラフィーは検査が痛くて苦痛を伴うにも関わらず、その検知率が正確さに欠けるとあまり評判がよくありません。低侵襲の新しい技術がアンメットメディカル・ニーズとして求められています。筆者も、前々職では乳がんを早期発見するあるプロジェクトに携わっていたことがあります。ゲームの世界で大成功を収めたこの技術がマンモグラフィーの性能を高めることができれば、素晴らしいことですよね。

DeepMind(ディープマインド)のニューラル・チューリング・マシーンとは?

それ以外では、2016年にテキストを音声に変換する音声合成システムの「WaveNet」を発表しています。2018年に発表されたGoogleAIと共同開発された改良版の「WaveRNN」は、2019年にビデオチャットアプリの「Google Duo 」に採用されました。

そして、コンピュータの原型にあたるチューリング・マシーンという概念を模範とした2014年に発表された研究を元にした、外部記憶装置とプログラム可能なコンピュータを内蔵したニューラル・ネットワークであるニューラル・チューリングマシーンを作成しています。この機械は、人間の脳の短期間の記憶を真似することができると期待されているそうです。

チューリング・マシーンを発明したアラン・チューリングに関しては、第2次世界大戦中にドイツ海軍の暗号エニグマを解読したことで連合軍を勝利に導いたというキーラ・ナイトレイがヒロイン役の自伝的映画『イミテーション・ゲーム』があるので、閲覧者の方も、ぜひご鑑賞ください。

DeepMind(ディープマインド)のアルファベットの他子会社への貢献のまとめと、その影響力の大きさ

DeepMind(ディープマインド)のAI技術はAlphabet(アルファベット)の子会社の発展大きく貢献しています。

上記のようなヘルスケア分野での活躍で、Alphabet(アルファベット)のヘルスケア分野の子会社Verily(ベリリー)がDeepMind(ディープマインド)の支援でいかに助けられているかについては、閲覧者の方には十分ご理解頂けたのではないでしょうか?

Verily(ベリリー)以外にも、今までご紹介してきたAlphabet(アルファベット)の子会社は、そのほとんどがDeepMind(ディープマインド)のAI技術に助けられています

Waymo(ウェイモ)は自動運転によるビッグデータの収集とディープラーニング技術での自動運転認識精度を高めており、気球による移動体通信のLoon(ルーン)はAIを使用して季節や高度により変化する気流の流れを予測してその位置を安定的に保っており、宅配ドローンサービスのWing(ウイング)はマシンラーニング技術を用いて、樹木やビルや電線などの障害物を避けて安全で便利な場所を探し出しているのです。

また、DeepMind(ディープマインド)Alphabet(アルファベット)の歴史そのものであり収益の柱であるグーグルにも貢献しています。

上述の音声合成システム「WaveNet」の技術は、スマホやスマートスピーカで使用される音声アシスタント機能であるGoogleアシスタント」として採用されています。

グーグルのモバイル向けOSアンドロイドの2018年に発表された9代目の「アンドロイド・パイ」は、アダプティブ・ブライトネスやアダプティブ・バッテリーなどのユーザの使用頻度にあった自動調整機能が特徴的でした。これも、DeepMind(ディープマインド)のマシンラーニング機能を応用したものだそうです。

DeepMind(ディープマインド)を買収していなかったら、現在のAlphabet(アルファベット)の、自動運転を始めあらゆる分野での優位は、確立していなかったといっても過言ではないでしょう!

閲覧者の方にも、Alphabet(アルファベット)の子会社を解説していればシリコンバレーの現状について理解できる理由とは、DeepMind(ディープマインド)の存在があったからだとわかっていただけたのではないでしょうか?

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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