海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
オーロラ(Aurora Innovation)

掲載:2022/6/3

最終更新日:2022/06/03

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は自動運転分野の注目企業オーロラ (Aurora Innovation)について解説していきます。

オーロラ (Aurora Innovation)の資金調達の経緯と株価

オーロラ (Aurora Innovation)はグーグルの自動運転子会社ウェイモの元CTO、テスラの自動運転部門の元トップ、ウーバーの自動運転部門の元トップという豪華メンバーが設立した自動運転システム開発企業です。それぞれの長所と短所を知り尽くした自動運転業界をリードしてきた各社のトップが勢揃いしたドリームチームであり、業界で注目されたのは当然といえるでしょう。

2018年のシリーズAで約110億円、19年のシリーズBで約660億円を調達すると市場価値は約2,200億円となりユニコーンの仲間入りを果たしました。7回で約2,300億円も調達しました。

そして、2021年11月にスパーク合弁でナスダックに上場を果たしました。ヤフーファイナンスによると、2022年3月の株価は昨年11月上場直後の4分の1ほどにまで下落しています。

オーロラ (Aurora Innovation)の概要と沿革

オーロラ (Aurora Innovation)は現在シリコンバレーのマウンテンビューとピッツバーグに本社を構えています。グーグルがウェイモを設立するきっかけとなったDARPAグランドチャレンジでカーネギーメロン・レッドチームとして参戦していた元ウェイモの幹部ら上記の3人により2016年に設立されました。

当初のゴールは、息子が大人になる頃には自動運転車の急速な普及により、運転免許がいらなくなるという漠然としたものでした。2000年の最初のテスト製品のローンチから5年後には自動運転車が人やモノを運ぶようになるものへと変化しています。乗用車ではなく、トラックやタクシー、商用バンへの自動運転システムの提供を目指しているようです。

2018年にはフォルクスワーゲンとヒュンダイと商用車向け自動運転ソフトの開発で提携、CESでは画像処理用半導体大手エヌビディアが自動運転用コンピュータプラットフォームの提供を発表、ペンシルバニア州で初の自動運転テスト企業に選ばれるなど、飛躍を遂げました。

2019年にはルミナー・テクノロジーズの記事で紹介したLiDAR開発企業を買収し、性能と安全性の向上への期待が高まります。

フィアット・クライスラー社とも商用バン向け開発で提携したのですが、代わりに競合であるフォルクスワーゲンとの取引は解消されました。

2020年には初めてその商品が世の中に姿を表しました。LiDAR開発企業の買収でようやくテスト製品がローンチできたのです。テキサスに開発拠点を開設し、最初のLiDARシステムを発表しました。そしてウーバーの自動運転部門を買収、従業員数も倍となり、世界最大の自動運転システム企業となりました。自動運転システム開発から自動運転自動車の配車まで行う総合企業となったわけです。

2021年には米国の中型トラックメーカーのバッコール社とボルボとは自動運転トラック開発で、トヨタとデンソーとは自動運転タクシーで提携を発表、一気にトップ企業に躍り出ました。フォーブスの記事によると、自動運転タクシーはトヨタとウーバーと共同で2024年までに米国で開始予定のようです。

そして現行の3Dに対して先の先を行く5D LiDAR開発のスタートアップ企業を買収し、将来への布石を固めました。

現在はカリフォルニア州のベイエリア、ペンシルバニア州のピッツバーグ、テキサス州ダラスで自動運転車のテスト走行を実施しています。

オーロラ (Aurora Innovation)の商品

オーロラ (Aurora Innovation)の商品としては「Aurora Driver」というセンサーが挙げられます。LiDARシステムで周囲に3Dマップを描き、ソフトウェアで安全な経路を感知し、ハードウェアが自動車本体と連携します。

従来のLiDARシステムは波長で距離や速度を測定し周囲の物体を把握します。ルミナーは200m先まで測定できました。 2019年に買収したBlackmore社はFMCW LiDARという次世代システムを10年以上も研究してきたそうです。この次世代LiDARシステムにより、Aurora Driverは鏡や距離計も使用し、300メートル先の物体まで把握できるそうです。

解像度も高く、信号の色や交通標識までも認識し、霧や雨、夜でも性能は落ちないそうです。これは全天候に有効な4D LiDARシステムを採用しているからだそうです。

しかし、これらはあくまでも理論値であり、実際の商品の性能についての実証はこれからだそうです。2023年にこの次世代のLiDARシステムのローンチを予定しています。

ポルシェが支援するAeva社は2022年2月に世界初のFMCW LiDARを発表、インテル傘下の半導体企業モービルアイやもこのFMCW LiDARを開発中のようです。このFMCW LiDARにより自動運転の実現性が向上するわけで、どの企業が業界のリーダーとなるのかはまだ分からない状況のようです。

自動運転業界では、アルファベット傘下のウェイモテスラを始めとして、アマゾン傘下のZoox(ズークス)、Velodyne、Aeva、ルミナー・テクノロジーズなど、競合がひしめいています。まだその将来の中核製品についても明らかでないオーロラ (Aurora Innovation)ですが、自動運転業界のカリスマ3名が経営トップである、自動運転のパイオニアの一つであったウーバーの技術を引き継ぎ自動運転タクシーでは中核企業となる同社が経営参加をしている、という2つの特徴から、自動運転業界のリーダーの1社となるのは間違いないのではないでしょうか?

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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